韓国映画というのは救いのないものが多いかな。
今日見た「テロライブ」最初からぐいぐい引き込む。
ラジオ放送に格下げになった男が、放送中にテロ予告を受けたことをきっかけに再びメインキャスターに返り咲くことを企む。テレビ局といえば、ドラマの「ミスティ」もどれだけおもしろかったことか。
しかし、この映画は単なるテレビ局内やテレビ局同士の熾烈な争いの映画にとどまらず、いわゆる韓国権力システムの闇というか、闇構造の中の奴隷を描いたものだと感じる。
主人公役のハ・ギョオンウ。見たことありそうで、この人は映画中心。よくドラマに出ているチャンヒョクによく似ているなぁと思いながら、当初チャンヒョクの名前が出てこない。
ハギョンウ演じるユンキャスターが、テロ予告電話を、千載一遇のチャンスとして利用する決断をしてからの早業。男はこうでなくっちゃ!と思えるくらいの頭の切れ!身だしなみを整える速さとカッコよさ!
映画はほとんど、彼一人の大写しばかり。役者冥利に尽きる映画だったのではないか。
そして、出てくる前からテレビ局の局長が誰だかわかってしまうという「イギョンヨン」
テレビ局長ならこの人に頼め!って感じっすよ。
この人の魅力はにじみ出る誠実さと信頼性。がしかし、胸糞悪くなるほどの視聴率稼ぎと出世欲にまみれている男!演じるよりも、その存在だけで、それを語れる俳優も珍しいかも。そして、彼はおそらく貧乏人はやったの、みたことない。珍しい俳優の一人。
この爆発の犯人の巧妙なことも驚くべき点なだけど、ユンキャスターと局長、それに他局のキャスターも絡んできて、もうそれぞれの思惑がくんずほぐれつしちゃってる。
「えーっそれか!」みたいな低いうなり声が出ちゃいそうな場面が多数。
映像的にはかなりおおがかりな感じで、リアルさは十分。
次第にユンキャスターに分が悪くなっていく。最後はまさかの射殺命令。
結局、別れた未練ある妻の行く末で、この男の覚悟は決まる。
生きていても仕方ない。自分の身の潔白と、犯人の請願と、権力すべてに対する憤り。それらをすべて彼は背負う。
犯人、前妻の死、そして矢継ぎ早の自分の射殺命令を聞いたとき、おそらく混乱で彼は頭が真っ白になり、絶望に襲われ、不条理さに憤ったことだと思う。
そこから、たまたま自分の手の中にあるスイッチを押すことを決意する。その数十秒間は、心情面での圧巻であり、彼への同情理解をマックスにさせたと思う。取り返しのできない不名誉、裏切り、濡れ衣、背信、不条理なことすべてが一度にきたときに、思考回路としてはおそらくこれしかない決断なんだろう。
自分や他人の命が大事とか、そんなこと言ってられないほどの社会的人間的に危機状態に陥った彼。この瞬間だけ、人間の哀れさに涙腺が緩みました。
やはり、韓国俳優の演技力は素晴らしかったと思います。